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音楽ファーストの演奏

弾き手がプロかアマチュアかにかかわらず、「音楽ファースト」の演奏が好きだ。自分をよく見せようとしたり、何かを誇示しようとしたりするのではなく、あるべき音楽だと自分が信じるものを、そのまま差し出してくるような演奏が好きだ。


そうしたものは、どんなときに立ちあらわれるのだろう。コンプレックスから自由になった演奏、と言えばよいだろうか。ただ音楽そのものを慈しむことができている状態。もちろん準備は入念にしなければならないし、万全だと思える準備をしていてなお、本番の緊張で崩れてしまうこともあるだろう。でも、それは演奏の出来不出来とは別の次元の話だと思う。


曲のあるがままを、媒介となる自分自身もできるかぎり自然な状態で鳴らすこと。「あるがまま」と言うと語弊もあるかもしれないが、演奏者が解釈や分析にそれぞれベストを尽くし、あるべき姿を誠実に想像していけば、その時点でのその人にとっての最良のかたちが、ひとまずは「あるがまま」として立ち上がってくるのだろう、と今は思っている。


これは演奏にかぎらない。人付き合いにも、コンプレックスに縛られないあり方があるように思う。あるいは、劣等感をいったん引き受けたうえで、それを超えていくコミュニケーション。自分を尊重し、同じ重さで相手も尊重する。当たり障りのない関係、ということではなく、お互いがあるがままでいながら、言うべきことはきちんと言い合える関係を築くことができたら、どれほど幸せだろう。


価値観を誰かに押しつけたり、陰で人のしていることを笑ったりせず、できるだけ誠実でいようとすると、自然とそうありたい人たちが周りに集まってくるのだな、と最近よく感じる。自分のやるべきことをやり、音楽ファーストの演奏をし、そんな演奏をともに目指したい仲間とアンサンブルをしていく。そんな人生を、これからも続けていきたい。

 
 
 

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