鍵盤は「つかんで放す」。では、つかむ前に何を考えるのか?
皆さんこんにちは、ピアニスト石川武蔵です。
前回はピアノの鍵盤にどのようにアプローチするかというお話でした。
「つかんで放す」がキーワードでしたね。試していただけたでしょうか。
今回の その3 では、鍵盤にアプローチする時に考えることについて書いていきます。
身体を動かすにはイメトレが必須
音をどのように出すか、それはピアノに限らずどの楽器を演奏するにしても重要なことです。
汚い音より綺麗な音が出る方が良いに決まっていますし、綺麗な音を出すためには正しい奏法が
不可欠です。しかし「綺麗な音よ、鳴ってくれー!!」と念じながら弾いてもなかなか綺麗に
響く音は出てくれません。人生は、厳しいですね。
しかし人間の脳ミソというのは結構都合よく出来ていて、自分の肉体が自由に制御できる状態であれば、イメージした通りの行動を取れるように勝手に肉体を操ってくれます。スポーツを始めとしてイメージトレーニング(イメトレ)という言葉が使われるようになって久しいですが、これは理に適ったことなんですね。また後に取り上げることになる練習の方法でも書きますが、演奏のような身体を使う作業は、事前準備として自分が本番中にどのように身体を動かすべきなのか知っておかなければなりません。今回の記事は、事前準備の更に前の段階の話だと思っていただければと思います。
ピアノの弾き方 その3 = 「(頭の中で)音を聴け!」
結論を述べます。ピアノの弾き方 その3 は「音を聴け!」です。
聴いてるよ!とツッコミが返って来そうです。自分の音を全く聴かないで楽器を演奏する人は
ほとんど居ないと思いますが、そういうことではないんですね。
では一体どういうことかというと、音を出す前に聴く、ということです。
気合いの話かなと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、違います。本当に大事なことです。
より具体的な言葉で書くと、「自分の出したい音のイメージを明確に思い浮かべ、頭の中で鳴らす」ということですね。その後、なるべくイメージした音に近い音が出るように、鍵盤にアプローチを始めます。その1やその2で読んだことを思い出しましょう。肩や肘、手首は自由になっていますか?
頭の中で音が鳴らせない時は?
楽譜を見ても、頭の中に音が鳴らないという人も多いと思います。あるいは理想の音のイメージが湧かないという場合もあるかもしれません。そんな時は自分の好きな録音を探してみましょう。最近は定額の音楽サービスも増えていますから、悪くない音質で様々なプロの演奏を聴くことが出来ます。良いと思った演奏を真似するつもりでイメージを膨らませるのも良いと思います。最終的には自分一人でイメージが出来るようになるのが理想ですが最初は何事も真似からです。武道も型から入りますし、似たような意味ですね。
何度もイメージと実行、そしてフィードバック(実際に出た音を聴いて、理想の音だったかどうか確認する作業)を繰り返していくと、段々自分がどのように身体を使うとどのような音が出るのかということが分かってきます。そうやって色々な音の引き出し方を知っていくことで、音色のパレットを充実させていくことが出来るでしょう。この段階では試行錯誤がとても大事です。曲の演奏を完成させるまでに一番時間をかけたい作業ですね。
練習は修行ではない。楽しめる練習をしよう。
曲の練習を始める際に、先に音を正確に弾けるようになってから表現をつけていくというプロセスを取っている方は結構な割合で存在しているのではないかと思いますが、その方法は時間の浪費が大きいです。どのような演奏がしたいか、どのように個々のフレーズを奏でるのか、あるいは個々の音の響きはどうするのか。それらが決まってから音を出し始める方が曲を習得するまでの時間が短くて済みますし、何より音を正確に叩くための練習という不毛な修行のようなことをやらなくて済みます。練習も出来るだけ楽しくやりたいですよね。
演奏会をやると僕は聴衆の方から「とても楽しそうに弾いていたね」と言われることが多いのですが、ある程度思い通りに弾けるようになれば演奏は楽しいものです。更に演奏会という場は自由を最大限に享受できる場所ですから、楽しまない方が難しいです。この楽器は楽しめるようになるまではとても長い時間がかかると思いますが、皆さんがその道程をできるだけ楽しく感じられるようにしたいなあと思っています。
ということでピアノの弾き方 その3「音を聴け!」でした。いかがでしょうか?
明確なイメージを描けるようになれば、素敵な演奏ができるまでもうすぐです。
ではまた次回のブログでお会いしましょう。
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